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置閏法と定気法†
| 周期 | 平均 | 実際 | 
|---|
| 月の満ち欠け | 29.53日(平朔) | 29.3〜29.8日(定朔) | 
|---|
| 中気の間隔 | 30.44日(平気) | 29.5〜31.5日(定気) | 
|---|
- うるう月は二十四節気や朔(新月)によって決めるものですが、それぞれの決定には平均を取る方法 (平気、平朔) と実際の動きを考慮する方法 (定気、定朔) があります。
- 月の満ち欠けの変動幅は小さいので、平朔か定朔かはそれほど影響がありません。
- 平気法では、
- 中気の平均的な間隔は1年の長さ÷12≒約30.4日であり、必ず月の満ち欠け周期より長くなります。
- 各月に1個ずつ中気が入り、時折中気のない月=うるう月が出るというパターンしかありません。
- したがって、中気なき月をうるう月とするだけで、単純に月名を決めることができます。
 
- これに対し、定気法では、
 
うるう月の偏り†
- ケプラーの第2法則により、近日点付近では地球は速く動きますから、中気の間隔は短くなります。逆に、遠日点付近では地球は遅く動きますから、中気の間隔は長くなります。
- 中気の間隔が短いと中気が次々やってくるため中気のない月=うるう月は生じにくくなり、長いとうるう月が生じやすくなります。つまり、うるう月の生じ方に偏りが出るのです。
- 近年では近日点は1月上旬、遠日点は7月上旬ですから、うるう月も近日点付近の閏9月・閏10月・閏11月・閏12月・閏正月はほとんどなく、遠日点付近の閏3月・閏4月・閏5月・閏6月・閏7月が多くなっています。
- 天保暦導入以後の1844年〜2014年(171年間=19×9年=63閏)では、前者は4回、後者は48回、中間の閏2月と閏8月が11回。
- 閏9月は2014年のみ、閏10月は1870年・1984年、閏12月は1890年のみ、閏11月と閏正月はありません。
 
置閏ルールの修正†
- 月の満ち欠け周期と中気の間隔に逆転現象が起こると、
- ひと月の間に中気が2つ入ることがありうる。
- 中気がない月が複数になりうる。
 
- このため、どれを何月と呼び、どれをうるう月とするかを別途調整する必要が出てきます。
- 逆転現象が起こるのは近日点付近に限られます。したがって、このような調整も近日点付近の月で行なわれます。
- このような調整を行なわず、含まれる中気だけで決定するのが伝統的七夕方式です。
 
天保暦ルール†
- 天保暦では二十四節気の定め方を平気法から定気法に変更しました。
- 天保暦では、上記の問題を解決するために冬至を含む月は11月、春分を含む月は2月、夏至を含む月は5月、秋分を含む月は8月となるように調整するというルール*1が加えられました。
| 朔 | 中気1 | 中気2 | 陰暦月 | 
|---|
| 1984/08/27 | 秋分( 9/23) |  | 8月 | 
| 1984/09/25 | 霜降(10/23) |  | 9月 | 
| 1984/10/24 | 小雪(11/22) |  | 10月 | 
| 1984/11/23 |  |  | 閏10月 | 
| 1984/12/22 | 冬至(12/22) | 大寒( 1/20) | 11月 | 
| 1985/01/21 | 雨水( 2/19) |  | 12月 | 
| 1985/02/20 |  |  | 1月 | 
| 1985/03/21 | 春分( 3/21) |  | 2月 | 
- このルールではうまく決まらないのがいわゆる旧暦2033年問題です。
- 二至二分の間がひと月しかないことがあります。この場合、どちらかを動かさざるを得ず、ルール破りになります。
- 二至二分の間が3か月で、その間に中気のない月が2つ入ることがあります。この場合、中気の優先順位がないのでルール破りにはなりませんが、どちらをうるう月とするか2通りに分かれます。
- 2033年は天保暦導入後初であるとともに、両者が同時に起こるケースとなっています。
 
時憲暦ルール†
- 中国で定気法を採用したのは時憲暦 (農暦) です。
- 時憲暦では、冬至を含む月から次に冬至を含む月までの間に13か月ある場合に,中気が入らない最初の月をうるう月とする*2、と定められました。
- 古来冬至を定めるのが暦の基本でしたから、これは自然な発想といえます。
- 韓国でも同様のルールが適用されています。
 
- このルールでは旧暦2033年問題のような問題は起きません。たとえば、天保暦導入前ですが1699〜1700年の場合、
- 冬至月と春分月の間がひと月なので天保暦ルールでは問題が発生。
- 時憲暦ルールなら冬至を11月とするだけなので問題にならない。
 
| 朔 | 中気1 | 中気2 | 時憲暦ルール | 
|---|
| 1699/12/21 | 冬至(12/21) |  | 11月 | 
| 1700/01/20 | 大寒( 1/20) | 雨水(02/18) | 12月 | 
| 1700/02/19 | 春分( 3/20) |  | 1月 | 
| 1700/03/21 |  |  | 2月 | 
天保暦ルールと時憲暦ルールの違い†
- 天保暦ルールと時憲暦ルール、どちらのルールを適用しても結果的には同じ置閏になることも多いです。
| 朔 | 中気1 | 中気2 | 天保暦ルール | 時憲暦ルール | 
|---|
| 1851/10/25 |  |  | 10月 | 10月 | 
| 1851/11/23 | 小雪(11/23) | 冬至(12/22) | 11月 | 11月 | 
| 1851/12/23 |  |  | 12月 | 閏 11月 | 
| 1852/01/21 | 大寒( 1/21) | 雨水( 2/19) | 1月 | 12月 | 
| 1852/02/20 | 春分( 3/20) |  | 2月 | 1月 | 
| 1852/03/21 |  |  | 閏  2月 | 2月 | 
| 1852/04/19 | 穀雨( 4/20) |  | 3月 | 3月 | 
関連ページ†
 
Last-modified: 2023-10-11 (水) 00:31:38